エマルジョン燃料とは
エマルジョン燃料とは石油等の液体燃料に水を混入したものです。
この燃料は様々なディーゼル機関の燃焼効率を改善することから、消費燃料の削減、スモーク等の有害排ガスの削減が期待されてきました。
ディーゼル機関での燃焼
ディーゼル機関は液体燃料（ガソリン等の低沸点の燃料を除く）を噴射ノズルより燃料を霧状に噴霧して使用しています。 その際、生成される油滴一粒の直径は、およそ50~100μmです。この油滴がボイラーの燃焼炉内やエンジンのシリンダ内において加熱され、周囲から内部に向かって、（拡散）燃焼をします。
エマルジョン燃料の燃焼について
エマルジョン燃料は油滴中に水を内包しています。この燃料が炉内で加熱されると、沸点の低い水（100℃）が先行して気化し1,650~1,700倍（大気圧下）に体積膨張します。すると、液体である周囲の油は飛散し、油滴が微粒化されます。
これにより、燃料と空気の接触面積が増大します。
油滴の直径が小さくなります。
これらのことから、エマルジョン燃料は効率よく短時間で燃焼させることが出来ます。すなわち、燃料のロスが抑えられ、スモーク等の有害排ガスを減少させることが出来ます。
また、エマルジョン燃料はNOX（窒素酸化物）の生成を抑制することが出来ます。NOXはCO2より高い温室効果がある等、酸性雨の原因となる有害ガスで環境規制の対象となっています。NOXは燃料中、空気中の窒素（N2）と酸素（O2）が加熱され、高温（約1,300℃以上で急増）にさらされることにより生成されます。 エマルジョン燃料は、燃焼の際に燃料中の水の蒸発熱により局部的に火炎温度を低下させるため、NOXの生成を抑制します。
従来のエマルジョン燃料は
前述の通り、エマルジョン燃料は省エネ、環境対策等に貢献できる技術として期待されてきましたが、定着した事例があまりありません。それはなぜでしょうか？
従来のエマルジョン燃料の問題点とナノエマルジョン燃料による解決
従来のエマルジョン燃料には主に３つの問題点が有ります。
① 不十分な有効性
② 燃焼機関への悪影響
③ 経済性が見合わない
この問題点とナノエマルジョン燃料による克服についてご説明します。
① 不十分な有効性
従来のエマルジョン燃料は消費燃料の削減、スモーク等有害排ガスの削減が不十分でした。この主たる原因は、内包する水の粒子径がバラバラで大きいこと、分散が不均一であることです。 エマルジョン燃料の有効性は、燃料中に内包する水の粒子径、分散状態によって大きく異なります。水の体積膨張による油の微粒化の度合いが変わるからです。すなわち、エマルジョン燃料の有効性を発揮する最適な水の粒子径、分散状態が存在します。
この最適な水の粒子径、分散状態を達成したのがナノエマルジョン燃料です。パートナー企業との技術開発により、このナノエマルジョン燃料を製造することが可能となり、有効性の高い燃料が完成しました。
② 燃焼機関への悪影響
従来のエマルジョン燃料は、燃焼機関への様々な悪影響があります。
一つは、燃料系統や燃焼機関での発錆です。
従来のエマルジョン燃料は、燃料タンク、燃料系統、エンジン内部の内壁に水が接触し発錆することがありました。
ナノエマルジョン燃料は水の粒子径が著しく小さいため、静置・加熱・送液安定性に優れており、燃料系統等の内壁に水が接触することがなく、一切発錆はありません。
もう一つは、燃焼機関へダメージを与えることです。 従来のエマルジョン燃料は水の粒子径、分散状態が十分に均一ではない為、燃料噴射ノズルから噴射されるエマルジョン燃料の水分率が都度変化します。その為、特にエンジンでは筒内圧力が不安定となり、負担が掛かることになります。 ナノエマルジョン燃料は水の粒子径、分散状態とも均一で、常に安定した水分率の燃料が噴射されるため、筒内圧力も常に安定であり、燃焼機関へダメージを与えることはありません。
③ 経済性が見合わない
エマルジョン燃料（一部の油種を除く）は、保存安定性を確保する為に添加剤（界面活性剤）を使用しています。通常のエマルジョン燃料では、この添加剤のコストが高い為、経済効果が極めて低く（場合によってはマイナス）なります。
ナノエマルジョン燃料は水粒子径を従来の1/100程度にし、添加剤の添加量を従来の1/10程度にすることで、大幅にコストダウンし、高い経済性を実現しました。